養育費を払わない相手に給料差し押さえはできる?強制執行の方法を徹底解説!

「養育費の支払いが滞っていて困っているんですが、どうしたら差し押さえできますか?」
毎月、元配偶者から養育費をもらっている女性からのご相談です。
この方は、小学生のお子さんが二人いるシングルマザー。
毎月の養育費も生活費の一部にと考えている場合は、支払いが滞ることは死活問題ですね。
厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によると、元配偶者から養育費を受けとれている母子家庭は4世帯に1世帯だそう。
多くの母子家庭世帯が、子どもの養育に必要な養育費を受け取れていないことがわかります。
そこで今回は、
- どのようにすれば早期に確実に養育費を支払ってもらえるか
- 給料や預金口座に対して強制執行(差し押さえ)する方法
について具体的に解説していきます。
目次
養育費とは
養育費とは、「子どもが健やかに成長するために必要な費用」です。
夫婦が離婚した場合、片方の親が親権者となり、子どもを引き取って養育監護していくことになります。
子どもを育てるには、いろいろな費用がかかりますから、子どもを養育する親は、子どもを養育していない親に対して子どもを育てていくために要する費用を請求することができます。
これは、親である以上、親権の有無や一緒に住んでいないということであっても、子どもの生活に責任を持たなければならないという原則があるからですね。
にもかかわらず、母子家庭の4世帯に1世帯しか養育費をもらえていないというのが、現状なんです。
養育費を差し押さえ(強制執行)で獲得するための条件は?
では、養育費をもらえない場合、どのようにすれば養育費をもらえるようになるでしょうか。
「払ってください」といくら伝えても払ってくれない場合は、「差し押さえ」や「強制執行」をするしかありません。
差し押さえや強制執行と聞くと、弁護士でなくてはできない難しい手続きなのでは?と心配される方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、正しい方法を知れば、ご自身で行うことは十分可能です。
以前のわたしも、これからご紹介する方法で元夫の給料からの差し押さえをした経験者です。
決して難しいことはありませんので、あきらめないでくださいね。
まず、差し押さえ(強制執行)で養育費を獲得する場合、以下の2つの条件を満たす必要があります。
債務名義を取得をしていること
「債務名義」とは、一定の権利義務関係の存在を証明する文書のことです。
- 確定した判決書 「養育費○○万円を支払え。」などと命じている判決書のこと
- 和解調書、調停調書
- 公正証書
公正証書は確定した判決書の代用になる
確定した判決書の代わりに、公正証書でも、強制執行を申し立てることができます。
ただし、「執行受諾文言」と「執行文」が付いていなくてはいけません。
「執行受諾文言」とは、「債務者(金銭などを請求される者)は、支払いの約束が守れず強制執行されても文句を言いません」というような文言のことです。
執行文とは、『この公正証書で強制執行できます』という一文です。
もし執行文がない場合は、公証役場へ行き「執行文付与の申立て」をしましょう。
相手の勤務先や預貯金口座情報を特定していること
強制執行では、給料または預貯金口座の差し押さえをすることができます。
そのためには、相手の情報を特定しておかなければいけません。
給料の差し押さえをする場合は会社名を、預貯金口座の差し押さえでは、銀行名と支店名を特定しなければなりません。
養育費を払わない相手への財産調査が容易に
2020年4月1日から改正民事執行法が施行されたことにより、以前よりも財産調査が容易になりました。
給料差押えのためには勤務先を、預貯金差押えのためには口座保有銀行を調べることが必要ですが、これらを確認するためには元配偶者に直接確認するしかありませんでした。
そのため、連絡がつかない、教えてくれない等のため、強制執行ができないケースが多々ありました。
しかし改正民事執行法では、役所等への給与支払者情報開示請求や、銀行への預金口座情報開示請求の制度が導入されました。
勤務先や銀行口座がわからない場合も、手続きできるようになりました。
2021年4月からは、法務局への不動産情報開示請求の制度の実施も予定されています。
養育費の給料差し押さえではいくらまで?
養育費を給料から差し押さえるといっても、全額を差し押さえることはできません。
相手にも生活がありますからね。
給料差し押さえの範囲は、給料から税金を控除した残額の2分の1になります。
残額が66万円を超える場合は、33万円を相手に残し、残りすべてを差し押さえることが可能です。
(出典:裁判ホームページ)
また、給料の差し押さえでは、未払い分の申し立てと同時に、将来分の養育費に対しても申し立てることが可能です。
ですから、一度申し立ててしまえば毎月申し立てる必要がありません。
将来分の養育費も差し押さえておくことで、相手が会社を辞めない限り、毎月給料から養育費を受け取ることができます。
現在、わたしもこの方法で受け取っています。
また、もしも元配偶者が会社を辞めた場合でも、退職金などがある場合は未払い分については差し押さえができます。
あくまでも、将来分の養育費は、支払い期限日後に支払われる給料からでないと、回収はできない点は、ご注意くださいね。
差し押さえで養育費を回収する具体的な流れ
ここからは、債務名義と相手の情報を得たうえでの実際の回収の流れを見ていきましょう。
必要書類を用意する
まずは、必要書類を用意します。
必要書類は債務名義によって異なります。
- 判決正本
- 調停調書正本
- 公正証書正本
裁判所への差し押さえを申し立てる
申立て費用は、以下のようになります。
- 収入印紙:4,000円
- 切手:2,500円(裁判所によって異なります)
切手の枚数や金額は変動しますので、申立て先の裁判所に確認してから手続きすることをおすすめします。
裁判所からの差押え命令が出る
裁判所は申立てを受け、会社または金融機関に対し、差押え命令の発令および同命令正本を発送します。
送達命令が送達された1週間後から、取立を行うことができるようになります。
給料から差し押さえた養育費の取り立て方法
差し押さえた給料の取り立て方法は、『取立書』を裁判所に提出し、ご自身で相手が勤務する会社に連絡し、支払い方法や期限などを決めます。
また、支払われた後は『取立完了届』を提出する必要があります。
このあたりのことは、申し立て手続きの際に、裁判所から詳細な書類がもらえるので、その通りに行いましょう。
養育費の具体的な金額や金額の決め方については、こちらを参考にしてください!
まとめ
今回は、
- どのようにすれば早期に確実に養育費を支払ってもらえるか
- 給料や預金口座に対して強制執行(差し押さえ)する方法
についてお伝えしました。
この記事を参考にしていただければ、ご自身でも養育費の強制執行を申し立てて、養育費を回収することはできるはずです。
現在わたしも、養育費を元配偶者の給料から差し押さえてもらっている状況です。
会社側は、裁判所からの差し押さえ命令には従い、毎月きちんと振り込まれています。
相手方からの養育費の支払いが長期に滞って生活に支障がでる前に、手続きを進めてくださいね。
養育費のことでお困りのときは、お気軽にご相談ください!